HPVワクチンの接種を検討されている方から、こんな質問を頂きました。
「ワクチンを打とうと思うのですが、どんな場合だと打って意味がありますか?(性交渉後、男性、45歳以上、既婚など)打つ前に検査は必要ですか?」
こちらでは、このご質問に対する産婦人科の先生による解説をご紹介していきます。
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この記事は、予防医療普及協会理事・産婦人科医の三輪綾子先生監修のもと作成しております。

ワクチンを打つか打たないかは個人の自由です。とくに積極的勧奨の対象にない方々は自ら行動しなければなりません。
ちなみに接種する前に感染しているかどうかを検査する必要ありません。
まず、どういう人たちに効果があるのでしょう。
1.性交渉の有無
一番効果が高いのは性交渉前で確実にHPVに感染していない時です。感染する前であれば、ワクチンが効果をもつ全てのHPVに対して効果があります。
性交渉の経験がある方はどうでしょうか?
もしすでにHPVに感染していたら、その感染しているHPVの種類に対しては治療の効果はありません。
しかしワクチンが効果をもつ全てのHPVの種類に同時にかかっている可能性は極めて低いですし、HPVに感染していたとしても自分で排除できれば、その後の2回目の感染を防ぐことができます。
HPVはありふれたウイルスなので、感染してもおかしくありません。50歳までの性交渉の経験のある女性のうち8割は生涯一度は感染すると言われています。感染しても9割方は自分の力で排除されますが、自然に感染しても免疫はつきません。
HPVワクチンを打てば、繰り返しの感染を防ぐことができます。感染している状態でHPVワクチンを接種しても治療効果はありませんが、悪化させるということもありません。
2.年齢
第一推奨は積極的勧奨の10〜14歳の女性です。
次は15〜26歳まで。海外だとキャッチアップ接種といい、当然効果はあります。
次は27〜45歳まで。若い方が効果がありますので打つなら早めがおすすめです。
45歳以降はデータがありませんが、打ってはいけないということではありません。
3.性別
女性はもちろん、男性がワクチンを接種しても当然効果があります。海外では男性も積極的に接種する国もあります。それは男性においてもがんを発症するリスクが抑えられるからです(中咽頭がん、陰茎がん、肛門がんなど)。
男性においてももちろん性交渉を経験する前が良いですが、時期を過ぎて性交渉した後でも効果は認められるので接種をおすすめします。
男性の場合は、自分のがん発症リスクを抑えたければ2価や4価でも十分カバー力があります(4価は尖圭コンジローマという性感染症も予防してくれます)。男性の肛門がんへの適応が承認されたのも4価のガーダシルです。
相手への感染を防ぐためには9価を接種しても良いと思います。海外では9価が主流ですが、日本では男性向けには未承認の段階です。早く男性に対しても9価HPVワクチンの承認がおりることが望まれます。
4.既婚
HPVは性交渉で感染するので、パートナーが決まっていれば当然新たな感染の機会は減るでしょう。しかし、自分の大切な相手が持続感染(HPVがすみ着いている状態)をしていれば、当然自分も感染する機会にさらされるわけですし、逆も然りです。
また関係性が多様化している時代ですので、パートナーがずっと同じとも限りません。ですので、自分の年齢と今後の感染の機会などを踏まえてよく考えていただければ良いと思います。
HPVワクチンには2価、4価、9価の3種類があります。HPVワクチンを接種してみようと思われた方は、こちらの比較を参考に、「ご自身のお住まいの地区 シルガード9などのワクチン名」で検索して打てる場所を探してみてください。
シルガード9は2021年2月24日から発売されました。
クリニックより申請が入ると製薬会社がそのクリニックに薬品を卸すようになります。全国に流通するまでは少し時間がかかるかもしれませんが、徐々に打てるクリニックが増えるはずです。
また、予防医療普及協会ではシルガード9が接種可能な医療機関リストを公開しているので、ぜひご活用ください。
それではみんなで、正しく知って、行動することで、防げる病気を予防していきましょう。
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【構成・編集、図表作成 倉光めぐみ】