【徹底解説】ヒトパピローマウイルス(HPV)とは何か

【徹底解説】ヒトパピローマウイルス(HPV)とは何か

「ヒトパピローマウイルス」という名前を聞いたことがあるでしょうか?

「HPV」と略されるこのウイルスは、性交渉経験があれば男女ともに約50-80%の方は感染したことがあるとされる、ごくありふれたウイルスです。

男性、女性、それぞれにどのようなリスクがあるのか等、知っておきたい内容をまとめました。

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この記事は、予防医療普及協会理事・産婦人科医の三輪綾子先生監修のもと作成しております。

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ヒトパピローマウイルス(HPV)とは何か

ヒトパピローマウイルスとは、性交渉の経験がある男女の約80%が生涯に一度は感染する、ごくありふれたウイルスです。これまでに180種類くらい見つかっており、現在でもその数はどんどん増えています。

感染経路は性交渉。皮膚や粘膜の接触によって子宮頸部や陰茎に感染します。また、オーラルセックスにより咽頭に、アナルセックスにより肛門にも感染します。

感染した場合、多くの場合は2年以内にウイルスが自然に排出されて治癒します。しかし、感染が持続してしまった場合、細胞への異常や病気を引き起こします。

HPVに持続して感染するとがんのリスクが上がる

女性の場合は子宮頸がん、腟がん、外陰がん、男性は陰茎がん、男女問わず中咽頭がんや肛門がんの原因になります。

浸潤性のがんとは、がん細胞が近くの組織に入り込んだり、血管・リンパ管から全身に移行するタイプのがんを指します。
浸潤性のがんとは、がん細胞が近くの組織に入り込んだり、血管・リンパ管から全身に移行するタイプのがんを指します。

これらがんの中で特に罹患者数や死亡者数が多いのは子宮頸がん。日本では年間約3万人が子宮頸がんの診断を受け、約1万人が子宮を摘出し、約3,000人が命を落としています。[1]

子宮頸がんとHPV感染の関係は、肺がんと喫煙の関係よりも強いとされています。HPV感染を防ぐことで、約60〜85%の子宮頸がんの予防が可能といわれており、現在は小学校6年生から高校1年生までの女子に対してHPVワクチンの接種が公費でおこなわれています。

そんなこともあり、HPV感染に要注意なのは女性、という印象があるかも知れません。しかし、上記の図の通り、男性に関連する病気でも、HPV感染は影響します。

例えば中咽頭がん。年間の罹患者数は約1,800人で、子宮頸がんと比べると多くないかも知れません。ただ、注意が必要なのは、中咽頭がんには健康診断のオプションなどで受けられる検診がないことです。初期は自覚症状がないこともあり、気づいたら症状が進んでしまっている危険もあります。[1]

肛門がん、腟がん、外陰がんなども、"人口10万人あたり6例未満の稀ながん"である希少がんに分類されます。[2] なので罹患するイメージは薄いかも知れません。しかし、数が少ないゆえに定期検診の対象ではなかったり、診療の課題が他のがんに比べて大きかったりする点は把握しておきたいところです。

HPVは皮膚の異常も引き起こす

ヒトパピローマウイルスの"パピローマ"(Papilloma)は乳頭腫という意味です。そして名前の通り、このウイルスは乳頭のような「イボ」を発生させます。

例えば、性感染症である「尖圭(せんけい)コンジローマ」。この病気は、主にHPV6型と11型により引き起こされます。男性の陰茎・陰囊、女性の陰唇・腟などの性器周囲、肛門周囲に鶏冠状の〝イボ〟ができるのが症状で、性感染症のうち約10%を占めます。イボを取り除くのに外科手術が必要となったり、取り除いても再発の可能性が高いなど、治療も厄介な病気です。

妊娠している女性がHPV6型・11型が感染している場合、産道で母子感染を起こしてしまい、赤ちゃんの喉から肺にかけての粘膜に感染します。そうなると赤ちゃんに外科手術が必要なイボが感染箇所にできてしまう「再発性呼吸器乳頭腫症」という病気を発症するため、注意が必要です。

また、尖圭コンジローマのように生殖器にできるイボ以外にも、HPVは手の甲や足の裏、顔などにイボを引き起こすことが知られています。

HPVが引き起こす病気の予防はワクチンが確実

HPVは性交渉経験のある男女の約50-80%に感染の可能性があるごくありふれたウイルスですが、感染に対する治療方法はありません。

そのため、感染しないことが先にお伝えしたような病気に対する一番の予防策となります。

HPV感染はワクチンで予防することができます。

ワクチンの接種は、性交渉の経験をする前(初交前)が最も効果的ですが、性体験後でも、6、11、16、18型の全てに同時感染している可能性は極めて低いので、HPVワクチンを接種する意義は十分あるといえます。

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ワクチンは、すでに感染しているHPVを排除したり、ウイルスが自然と排除されるまでの期間を短縮したり、進行してしまった病変の治療を行うことはできません。あくまで感染を予防する役割を果たします。

現在日本で受けられるワクチンは、3種類。「シルガード9」という2021年から新たに発売開始されたものが、感染を予防できるHPVの種類が一番多く、9つの型(9価)。ガーダシルとサーバリックスはそれぞれ4価、2価と続きます。

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シルガード9は海外ではガーダシル9として販売されています。4価のガーダシルを製造販売しているMSD株式会社(米国とカナダではMerck & Co., Inc.)がシルガード9/ガーダシル9においても製造販売を担っています。

小学校6年生から高校1年生の女子以外は、ワクチンの接種費用は自己負担です。費用はワクチン接種3回分と診察料を含め、10万円前後のところが多いです。高額ですが、ワクチンから得られるメリットとHPV感染のリスクを考慮して判断したいですね。

男性がワクチンを接種する場合、2021年5月時点で日本で承認されているのは4価のガーダシルのみとなります。2020年12月から男性への接種が厚生労働省により認められ、これにより、ワクチンによる健康被害が万が一発生した際に、国による医療費や障害年金等の補償を受けられるようになります。4価以外のワクチンも接種は可能で、実際に行われています。

コンドームだけではHPV感染は予防しきれない

コンドームの使用によってHPVの感染を完全に防止することはできません。コンドームで保護されていない陰唇、陰嚢、または肛門組織との接触によって感染する可能性があるためです。

まとめ

ヒトパピローマウイルス(HPV)は、男女ともにがんをはじめとする厄介な病気の原因となります。

予防方法は初めて性交渉を体験する前にHPVワクチンを打つことがもっとも効果的ですが、性交渉体験後でも悪性の強いHPVに全て感染している可能性は極めて低いため、ワクチンを打つ意義は十分あるといえます。

お届けする内容は以上です。

こちらの情報が少しでもお役に立てていますように!

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女性の場合、検査キットを使ってHPVへの感染状態を知ることができます。検査キットの詳細はこちらからご覧ください。

出典

本文中の出典

[1] 国立がん研究センターがん情報サービス「最新がん統計

図表内の出典

【文・図表作成 倉光めぐみ / 編集協力 安江志保、戒能果林】

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