ポリープの早期発見で発症リスクが激減する大腸がん予防の話

ポリープの早期発見で発症リスクが激減する大腸がん予防の話

大腸がんは、日本での死亡者数が男女合わせて2番目に多いがんです。

2019年の統計データでは、大腸がんで命を落とされた方は男女合わせて年間約51,000人。これは1日あたり140人の方が亡くなられていることになります。

また、大腸がんになる人は年々増加傾向にあり、この30年間で死者数は2倍以上、罹患者数は3.5倍以上になっています。[1]

もしこの中のどれかに当てはまる場合は、特に注意が必要です。

  • 40歳以上
  • 肥満(腹部の脂肪過多)
  • お酒好き
  • 喫煙者
  • 人間ドックでポリープが見つかったことがある

大腸がんには、予防に取り組むべき理由が3つあります。

  1. 大腸がんはしっかり検査を受けることで早期発見しやすいがんであること。
  2. 大腸がんの原因となるポリープを切除すれば、大腸がんのリスクは76〜90%減少させられること。ちなみにポリープは人間ドックで大腸内視鏡検査を受けた約18%(※)に見つかっています。(※) 2.5万人以上の集計(平均48歳)結果。
  3. 年に1度の検便でリスクを検知できること。

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この記事は、予防医療普及協会顧問で医師・医学博士の鈴木英雄先生監修のもと作成しております。

<鈴木 英雄先生>医師・医学博士・予防医療普及協会顧問

医師、医学博士。 平成6年、筑波大学医学専門学群卒業。専門は消化器内科、医学教育。平成15年に提橋氏とともに株式会社メディシス設立に関わる。平成19年から1年半、テキサス大学MDアンダーソンがんセンターへ留学。令和元年から筑波大学消化器内科学准教授。内科学会認定医、消化器病学会専門医、消化器内視鏡学会専門医、がん治療認定医、ピロリ菌感染症認定医。 平成29年度より、筑波大学付属病院 つくば予防医学研究センター 副部長に就任。

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<INDEX>

大腸がんの基本情報

大腸とは1.5〜2.0メートルくらいの菅で、小腸で消化・吸収された食べ物のカスから水分を吸収し、固形便として排出する役割を担っています。栄養を吸収する機能はありません。

大腸は結腸、直腸、肛門に分かれています。結腸は下の図、濃い赤い部分でいうワの字部分、直腸は肛門につながる12〜13センチメートルほどの部分。そして便が体内に排出される最後の部分が肛門です。

部位別がん死亡数では、結腸の方が直腸よりも2.3倍多くなっています。

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最新の統計では、大腸がんの罹患数は男女合わせて1位

2015年には約14万人が大腸がんと診断され、2020年には、15万8000人という予測が発表されています。 [2]

年齢別に見ると、40歳を過ぎると罹患率が上がり始めます。50代ではさらに罹患率は増加し、高齢になるほど高っていきます。

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大腸がんのリスクとなるこんな生活習慣に要注意

大腸がんの発症には、生活習慣との関連が確認されています。これまでの疫学研究から明らかになっている大腸がんの危険因子は、確実なものとして以下が挙げられています。

  • 肥満
  • アルコール(特に男性の場合)
  • 喫煙
  • 加工肉(ベーコン、ハム、ソーセージなど)
  • 赤肉(牛・豚・羊の肉)

この中でも強い関連性が見られるのが肥満です。2021年に発表された日本人を対象とした研究では、BMIが1単位増加するごとに、大腸がんのリスクが7%増加する[3]、との結果も出ています。(BMIの算出方法=体重kg ÷ (身長m)2。日本ではBMIが25以上で肥満と分類。)

肥満と大腸がんの関連には、インスリンの過剰分泌が影響しているとされています。

インスリンは、肥満の要因となる食生活によって上昇した血糖を下げようと分泌されます。このホルモンは、細胞増殖にかかわる増殖因子としての機能も持っています。この働きにより、インスリンとよく似た構造を持つホルモンの「インスリン様増殖因子」(IGF)も同時に活発化。このIGFの特性の一つである細胞増殖促進作用ががん細胞にも働いてしまい、がんの発生リスクを高めてしまうのです。

そのため最近では、発症前からインスリンの過剰分泌が続く疾患である糖尿病との関連性も示唆されており、糖尿病があると大腸がんのリスクが高まるとされています。

リスクを下げる生活習慣はまだ研究段階

一部の調査では、身体的活動(通勤や家事なども含む)の増加、全粒穀物や食物繊維、乳製品の摂取などが大腸がんのリスクを下げるとしています。[4] しかしこれらはまだ研究段階で、大腸がんとの明確な関連は明らかになっていません。

大腸がんの早期発見にはポリープ発見が鍵

大腸がんのほとんどは、「大腸ポリープ」から生まれます。

ポリープとはイボのような突起物で、大腸の壁の最も内側の粘膜から発生するものです。国内では、人間ドックで大腸内視鏡検査を受けた2.5万人以上の集計(平均48歳)で、約18%にポリープが見つかったと報告されています。

見つかったポリープを摘除することで、大腸がんのリスクは76〜90%減少させることができます。[5]。

ポリープは大きく次のように分けられます。

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ポリープの約80%は「腺腫」で、これはがんではないものの、がんになる一歩手前の状態(前がん状態)。多くの大腸がんはこの腺腫から生まれます。

内視鏡医であれば腫瘍か腫瘍以外かは内視鏡検査でほぼ判断がつきます。一般に5mm以上の大きさのポリープが摘除の対象とされ、1cmを超えると3つに1つはポリープの中にがんがあると報告されています [5]。

40歳以上は定期的な大腸カメラ、または便潜血検査を

ポリープの状態で早期発見するためには、いわゆる大腸カメラの「内視鏡検査」が有効です。

健康診断などで一般的に行われる、便から腸の出血の有無を調べる「便潜血検査」では、異常が検出できるのは、実は早期がんになった場合も50%程度です。

  • 進行大腸がんは約90% [6]
  • 早期大腸がんは約50% [6]
  • ポリープは約30%[6]、でき始めのポリープは10%未満 [7]

進行がんとは、下の図の通り、ポリープからさらに状態が進んでしまっているもので、治療には開腹手術や抗がん剤などが用いられます。

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便潜血検査の目的は、放っておくと命に関わるようながんを見つけ、「大腸がんによる死を防ぐ」こと。この点をしっかり理解しておく必要があります。

内視鏡検査では、がん化する前段階のポリープの発見が可能です。検査によりポリープが見つかったら、内視鏡で切除することもできます。

この2つの検査方法の違いや、内視鏡検査の受け方については、先生にわかりやすく解説いただいたこちらの記事で詳しく記載しています。合わせてご覧ください。

もし手軽に検査を行いたい場合は、自宅から検体を郵送することで結果がわかる便潜血検査キットなどで毎年検査を行うこともできます。

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一般社団法人予防医療普及協会は、便潜血検査キットを販売しています。まずは自宅で手軽に検査を受けたい方はこちらを活用ください。

大腸がんは、毎年定期的に検査・検診を受けて早期発見できれば、90%以上が助かる病気です。自分が今できることから始めてみましょう!

大腸がん予防のまとめ

  • 大腸がんは、今や日本人のがん罹患数で第1位。生活習慣との関連も確認されており、肥満は特に大腸がんの発症と強い関連が認められています。
  • 大腸がんの早期発見には、がんになる一歩手前の「大腸ポリープ(腺腫:良性の腫瘍)」の発見が重要です。ポリープの切除により、大腸がん発症のリスクは76〜90%下げられます。
  • 40歳を過ぎたら、大腸がんの検査を受けましょう。方法は大きく便潜血検査と内視鏡検査(大腸カメラ)があります。ポリープの段階から早期発見・治療をしたい場合、大腸カメラが有効です。発見が遅れるリスクはあるものの手軽さを重視したい場合は、安く手軽にできる便潜血検査の活用も選択肢のひとつです。自宅で手軽に確認したい場合は、郵送で検査も可能な検査キットを活用することもできます。

将来の自分に対して、今できることを積極的に実践しましょう!

この情報が少しでもお役に立てていますように!

出典

[1] 国立がん情報サービスがん研究センター「最新がん統計

[2] 国立がん情報サービスがん研究センター「2020年のがん統計予測

[3] Suzuki S, et al. Body mass index and colorectal cancer risk: A Mendelian randomization study. Cancer Sci. 2021;112:1579-1588

[4] World Cancer Research Fund/American Institute for Cancer Research. Diet, Nutrition, Physical Activity and Cancer: a Global Perspective. Continuous Update Project Expert Report 2018. Available at dietandcancerreport.org

[5] 堀江貴文さん著 予防医療普及協会監修「健康の結論」

[6] 松田尚久ら. FIT陽性癌 vs. FIT陰性癌 (3)内視鏡医の立場から. Intestine. 2019; 23: 441-8.

[7] Chiu HM, et al. Association between early stage colon neoplasms and false-negative results from the fecal immunochemical test. Clin Gastroenterol Hepatol. 2013; 11: 832-8. e1-2.

【文・図表作成 倉光めぐみ】

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